契約のタイミング 

ボクは実施設計まで設計契約をしない。期本設計は施主にとっては不安でもあり、楽しい時期でもある。実施設計までの基本設計の期間を無償とすることで、契約に縛られることなく自由な関係、立場で意見交換し、信頼関係を育てる期間においている。ボクの仕事は信頼関係が全て。さじ加減をして最善と思うものを提案できない仕事はしたくない。ベストと思えない仕事ほど苦痛なものはない。また、そんな仕事をスタッフにも職人にもさせたくない。何よりも不幸なのはクライアントだ。自分がベストと思えるものを提案し、それを請負って自分で作る。それを実現させるためには急がば回れ。契約は環境が整ってから。過去には基本設計の段階でキャンセルになったこともある。もちろんタダ働きだ。クライアントも時間を無駄にする。でも、それで良いと思う。建ててしまえば取り返しがつかない。自分が設計すれば全ての人が幸せになるわけではない。建築家には専門家としてそれらを冷静に判断できる信念と品性が必要だ。最近時々過去のクライアントから「この時期ボクが本当に仕事をする気があるのかとても不安だった。」と聞く。それはボクも同じ気持ち。でも、生涯付き合っていく覚悟を持つにはこういう時間はお互い必要だと思う。